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すずめクレイジーさんの天鳳位昇段戦にみる、「ブレない力」【過去掲載分】



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この記事は過去に「鳳南研究所 麻雀ウォッチ版」に掲載されていたものです。

2014年2月8日、その日の天鳳TLはお祭り騒ぎだった。すずめクレイジー十段(当時)が、天鳳位昇段戦を迎えていたのだ。

「3年ぶりに天鳳位が出現するかも知れない」と沸きに沸く観衆、「同卓して突き落としてやろうじゃねえか」と目論む鉄強達。そんなお祭り騒ぎを尻目に、トップで天鳳位昇段のすずめクレイジー十段は、ふうと一呼吸付いてから、何千回と押してきた予約ボタンを押した。

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東2局にはすずめさんらしいダマテンで1300-2600をツモり、

次局もダマで3000-6000。4万点持ちのトップ目に立つ。

歓喜に沸くTL。大観衆の期待と不安をよそに、すずめクレイジー十段はこのリードを大事に守りながら、一局一局消化していった。

そして、迎えた南3局、ここですずめクレイジー十段に、最後の試練が訪れる。

 

6巡目に、テンパイ一番乗りを果たす。ここをアガリきれれば、かなり天鳳位昇段に近付くところだが・・・

次巡、無情にも、ラス目の親からのリーチがかかったのだ。

そして一発目に持ってくる、生牌の発。現物は2枚ある。

放銃に回れば、リードは一気にチャラ。ラスなんて引こうものなら、マイナス180ptついてまたやり直しだ。いつもテンポ良く切っていくすずめクレイジーさんも、この時ばかりは長考に入ったのを覚えている。

重い重い数秒の沈黙のあと、すずめクレイジー十段は意を決して、

発を切り飛ばした。

ワンチャンスの1mも切り飛ばした。

勝利の女神が、すずめクレイジー十段に天鳳位の資格があるか、一世一代の勝負どころで腹をくくれる胆力があるのか、試していた。最後の試練だ。

手に汗握るすずめクレイジーさんに、もう大観衆のことなど頭にない。頭の中にあるのは、ここで勝つか負けるか、それだけだ。

そこで腹をくくって勝負したすずめクレイジーさんに、ついに勝利の女神(つのだ)が微笑んだ。値千金のツモアガリ。いつも冷静なすずめクレイジーさんも、この時ばかりは声が出たことだろう。

この500-1000にて勝負あり。オーラスを危なげなく乗り切り、見事に天鳳位昇段を果たしたのだった。


いつものすずめクレイジーさんなら、これくらいの危険牌はサラリサラリと切っていく印象がある。ただ、天鳳位昇段戦という大舞台で、あの発や1mをきっちり切っていける人間がどれほどいるだろうか。いくらメンタルが強くたって、ビビッてしまってアガリ逃す人間は山ほどいるだろう。

リードしているんだからオリるのは簡単だ。だが、天鳳位に上り詰める人間は、こうした一世一代の大舞台でも、決して打牌を変えない強さを持っている。

天鳳の醍醐味は、なんといっても昇段戦にあると思っている。特に、初めて到達する段位への昇段戦となれば、その緊張感は格別だ。
普段、長期成績で競う天鳳の段位戦も、昇段戦の時だけは一回勝負の色が強い。トップを取れるチャンスを逃し、次の半荘でラスを引いてしまえば、そこから戻れないことだってよくある話だ。事実、すずめクレイジーさんはこの一戦を制した後の天鳳位初戦で、ラスを引いている。そして、2着一回を挟んでもう一回ラス。この手がアガれていなければ、天鳳位にはなっていなかったかも知れないのだ。

昇段戦で緊張するのは当たり前だが、その中でも「勝負どころできちんと押せるかどうか」というのは、日頃培っている雀力が最も試される局面じゃないだろうか。大事な大事な昇段戦で後悔しないために天鳳打ちができることは、ブレないメンタルと、ブレない雀力を鍛えていくことだけだ。

牌譜はこちら→http://tenhou.net/0/?log=2014020814gm-00a9-0000-2e085d74

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【天鳳戦術】「ダマテンはケアするな」はもう古い!強者に学ぶダマテンケア【過去掲載分】


この記事は過去に「鳳南研究所 ウォッチ版」に掲載されていたものです。

先日、「新版 おしえて!科学する麻雀」が発売された。長くデジタルの麻雀の基礎となってきた本の新版。その「押し引き」の項には、ダマテンケアについて、このように書かれている。
「ダマの場合はテンパイ確率の推定が非常に困難であり、有効に戦術に生かすことは難しいので無視するのが一番です」


「ダマテンは無視」
これは現代のセオリーとなっている。
しかし、基本は無視だが、麻雀には「基本」だけで語れない局面が山ほど出てくるのも事実。何もアクションが入っていなくても、濃い河の他家に対して、ダマテンをケアしてオリる、回す、という選択肢は、リターンの薄い手では必要になってくる。
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ダマテンに対してオリる、というのは、ある意味で勇気のいる選択肢だ。バラバラな手、残り3巡しかない、というならともかく、自分の手がイーシャンテンなのに、テンパイしているかどうかもわからない他家に対してオリ?そんなことしていいの?と思うかも知れない。いいんです。副露もリーチも入ってなくても、張ってる時は張ってる。強者はこの辺、すごーくシビアにやっている。

強者に学ぶダマテンケア

zeRoさんの牌譜より。東一局。3段目に入り、現状イーシャンテン。4pも切っていることだし、5pをツモ切りするのは簡単だが・・・。

巡目が深く、他家も煮詰まっているのが目に見えているので、ドラまたぎの5pは切らずに先に打東。仕掛けもリーチも入っていないが、ダマテンが2軒入っている。

もちろんテンパイすれば切り出すと思うが、このイーシャンテンから5pを切り出すのはいただけない。ドラも自分の目から1枚しか見えておらず、この巡目なら、どこから満貫と言われても文句は言えない牌だ。リターンの薄い手で、そこそこ事故に遭うリスクを追わない。5pにくっつけて、他のところを払っていく選択肢だってあるわけだし。

ここで5pを切るのは、路肩に落ちている100円玉を拾いに行くようなもの。拾いに行っても大体は事故らないが、事故った時がひどい。100円を拾いに行って10万円の大ケガしたらバカらしい。

競りの南3局。ニャッピー夏目さんは14sテンパイを果たしていたが、6mを引いた瞬間スッと2sに手がかかった。

6mは上家の現物。ん?と思ったが、この打牌の意図はトイメンへのケアだ。
上家の2副露に対し、ラス目のトイメンがかなり危険な牌をバシバシ切りまくっている。捨て牌も濃く、ヤバイダマテンが入っていてもおかしくない。ここでテンパイをとっても2着のままもう一回南3局だが、トイメンに2000点でも打とうものなら、ラス目でオーラスを迎えることになる(2本場のため)。トイメンに両無筋かつドラ表の6mは、安易に打てる牌ではない。

トイメンにはやはりテンパイが入っていた。6mが当たっていたのは結果論と言えるだろうか?トイメンがテンパイしている可能性はかなり高い上、よく見るともうトイメンには14s,47s,36m,69m,47mの5本しか筋しか残っていない。きっちりとビタ止めし、ギリギリの3着を拾った。それにしても・・・形テンとはいえ、テンパイしているところからダマテンにビタ止めって、ちょっとカッコ良すぎるだろう。

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こちらは銀色いがぐりさんの6pチー。自分の手がバラバラで、なかなか厳しそう。ピンズを引くのもピンズをチーするのも大差ないため、形テンに向けてターツを作るチー。

4pは下家が切ったものの、上家がドラ表切りで、またちょっと切りづらい牌の仲間入りを果たした。4pを使いきりたいという意図もあるだろう。終盤で手バラならば、これくらいの繊細なケアが必要になってくる。

今回は全員イーシャンテンだった。

このように、自分の手にリターンが少ない時や、明らかにヤバイ手がいる時、強者達はきちんとケアしてしのぎきっている。事故の放銃は仕方ないことだが、事故の放銃を30%でも減らせたら、100半荘での結果はかなり変わってくることだろう。
ポイントは、「他家の河の濃さ」「自分の手にリターンがあるかどうか」だ。自分が手にならない時だけでもダマテンケアするようにすれば、かなり事故は減ることだろう。

オーラスのラス目は必ずテンパイを取りに来る

現状、ラス目と7500差、2着目と5500点差の3着目。こんな状況では、まず優先するべきはラス目の安全牌を切り続けることだ。当たり前のようだが、アガリに向かっている場合ではない。

完全順位制の天鳳で、オーラスのラス目がアガリに来ないということはない。必ず、必ずアガリに向かってくるのだ。自分がここから2着に上がれる可能性もかなり低いため、ここは絶対にラス目に放銃することのないよう、6p9pと切っていく。生牌の発を切って下家に刺さってしまうのは、完全に自業自得。それまでの数十分を全て台無しにしてしまわないよう、細心の注意を払ってケアしていこう。

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