8人目の強者は、夕凪(ゆうなぎ)さん十段。
牌譜を見た印象。この人の麻雀は徹底したラス回避麻雀。まさしく天鳳特化型雀士だ。これを書いている鳳南1988戦時点でのラス率はなんと0.203。鳳南1000戦以上のラス率ランキングで2位。2000戦のランキングでは、現在トップの二代目天鳳位マーク2さんが0.212なので、あと11戦でダントツに躍り出る。
打ち筋として特徴的なのは、なんといっても「ひたすらリーチをかけない」こと。牌譜を5個見たが、リーチをかけたのは2,3回だけ。とにかくダマテンが多い。できるだけ選択肢のないめくりあいを避け、多少得点効率を落としてでもラスを回避することに自信があるのだろう。ダマテンのままリーチを受けても、ダマのまましばらくゆらゆらと粘っていく。役なしでも通りそうなところは切って粘り、もうダメだとなったところで初めてオリる。おそらく、放縦率、リーチ率とも十段の中で1,2を争う低さなんじゃないだろうか。ここまで極端なタイプはなかなか見たことがないのだが、結果は数字にはっきりと表れている。
「夕凪」とは、いつも風の強い海辺の地域で、夕方にスッと風が止み、無風状態になること。暴風吹き荒れる卓上で、この人だけは場に波風を立てず、無風状態でラスを回避していく。風が強いとトンじゃうからね。(ウマイッ!)
赤5m受けは消えるが、現状安牌1枚しかない親への受けを重視した6m切り(追記:よく見たら2枚ありました^^;)。トイメンのホンイツ仕掛けにも、6mの方がポンされづらい。徹底的に守備力を重視した打牌が多い。
親でドラドラ赤の勝負手だが、ここでリャンシャンテンに戻してタンヤオへ。7p切りのシャンテンに受けてもタンヤオ変化は残るが、25mチーでの安定感は段違いだ。なかなか思い切った一打だ。チャンス手ではあるが、極限までリーチを避ける(特に愚形リーチ)ことを考えれば納得の一打だ。
リーチを受けた一発目。親でドラドラのテンパイ。58mはないとして、25mはダブルワンチャンス。安牌は3枚、テンパイを取ると出て行くのは赤だが・・・
ここは5m切りでテンパイにとる。待ちは心もとないが、点棒状況的にラス目が遠く離れている上、ドラ切り⇒3p切りリーチの切り順も考慮に入れているのではないか。ドラの3m切り時点で25mが場に4枚見えており、ドラを切ってまで25mに固定するパターンが減るので、単なるダブルワンチャンスよりも大分安全度があがるんじゃないだろうか。実践的だ。
ここも苦しい手牌。ターツは足りているため、早そうな親とラス目の共通アンパイ1mをキープしてカンチャンを先に払う。
すんなりと高目三色のテンパイを果たすがダマに構えた。硬い。親から5200の出上がり。
西場の暫定トップ目。ここでの8s切りは意図を聞いてみたい。
トイメンは7pチーして7sを切ったところ。3p1p1pの切り順から、5566pからの47pはかなり薄そうだが、万全を期し、三暗刻目を捨てて中筋6pから。中が出ればポンしてピンズを払っていくだろう。
1mがフリテンだが勝負手。ピンズが場に猛烈に高く期待できず、逆にソーズの場況は素晴らしい。受け入れMAXに受けず1p切ってソーズを伸ばす構想に。
仕掛けが入り乱れている状況でのドラカンチャンテンパイ。苦しい待ちだが自分は7sを切っている(上家に鳴かれている)。ここでの選択は?
テンパイ外し。まだテンパイしていない下家に危険な3pから先に切る。
首尾よく7sを引き入れたが、なにやら場には不穏な風が吹き荒れているのでダマ。リーチしてもダマにしても、36sの上がり目は薄そうだ。
流したい局面だが、一枚切れ発ではなく生牌の中を先に切っていく。リードしている局面で、放縦だけは絶対に避けるという意図が見て取れる。
白は1枚飛びだがこれは当然チーしてバックに受ける。
ここは1pではなく4pを切る。下位二人からリーチが来たらとても押し返せない手牌なので安全度重視。つい手癖で1pを切ってしまいそうなものだがこの4p切りは見習いたい。
二つ仕掛けて即座に3900テンパイ。からの
次巡1p単騎に受け変え。1pは場況も素晴らしく、ドラまたぎの47sよりはこっちの方が1.5倍くらいあがれそうじゃない?
ラス前、ラス目の親でテンパイ。3着と1100点差。ピンズは高く、4pがポンされているので大分苦しい待ちだ。打点も十分なので、ここは当然・・・
暴風雨リーチだ!!!ここは大雨洪水警報(親リー)を発し、足止めをしなくては誰かに上がられてしまう。ひたすらリーチを打たない夕凪十段がここぞの場面で打つ、珠玉の暴風雨リーチ。リーチ判断のお手本のようなリーチだ。トップ目、2着目の方々は直ちに避難していった。逃げ場のない3着目から12000の決定打。
次局このテンパイは台風一過のごとくダマ。
ツモ切りリーチに対してもダマでプッシュ。ソーズ引きでオリる構想だろうか。
トイメンの4p切り、8p切りリーチ時点では578pは0枚見え。カン7pペン7pには刺さる7pで、2pも3枚飛びだが、テンパイには取った。
ラス目で平和ドラドラのテンパイ。かなりの絶テンだが、1pは枯れており、4p1枚7p3枚残り。100人中99人がリーチしそうな手だが、夕凪十段の選択はなんとダマ!!
リーチがかかって厳しい7mを引かされる。1pが現物だが5pは4枚見えていて、4pは単騎にしか刺さらないため4p切り。
親でダブ東のみの4800もダマテンに構えた。3p切りのカン6pにすると、5p引きの際に両面に受け変わらない。リーチ判断はひとまず置いておいて、十段はこういうところは絶対に間違わない。というか、これを間違える人には十段になってもらいたくない。
リーチを受けたがダマプッシュ。
今回見た牌譜の中で一番いいなと思ったのがこの6m切り。オーラス3着と9100点差の親。瞬間のペン3mリーチの布石を作りつつ、3m8m7sチーでシャンテン変わらずながら18000の動ける形に受けられる。鳴きを考慮したこの一打、私は実戦で打てない。素晴らしい一打だ。
7sがチーできてテンパイを果たすも惜しくもあがれず!!
常に波風を立てず鳳南の海を乗り切る夕凪十段の夕凪打法。スタンダードな打ち方とはかなりタイプが違うので、私なんかでは到底真似できないが、守備型で上を目指す方は参考にしてみたらどうだろうか。ただし、一度かけてしてしまえば選択肢のないリーチとは対照的に、テンパイ後も常に選択を強いられるダマテン麻雀は、相当な精神力・忍耐力と、緻密な押し引きバランスが必要だ。
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