第3回は現十段のニャッピー夏目さん。以前にも十段に到達されていたようなので二度目の十段だ。
この人の打ち筋は一言で言えば「リスクを最小限にして」「バットを短く持つ」打ち方である。守備の意識が高く、手をあまり短くしない。かなり好形にこだわり、愚形リーチはほとんどかけないし、愚形を嫌う手組みをする。手数自体が少なく、それでいて高打点を作っていくタイプでもない。これだけ聞くと一見ラス回避だけしつつの地蔵3着型になりそうなものなのだが、着順分布は
「258-258-259-225」
と、ラスだけを回避しているような格好になっている。なぜか。
牌譜を見ていくうちに気づいた。この方は、もともと堅いタイプな上に「ラスに厳しく」をかなり意識して打っている。その結果、目なしに近いラス目ができやすくなり、オーラスやラス前でラスの恐れのない上位争いがしやすくなるため、連帯に繋がっていくのではないか(これはただの仮説だし、本人がどういった意識で打っているのかはわからないが)。
「ラス目に厳しく」「リスクを少なく」しょっちゅう言われているこのフレーズ、ラス率を下げるためだけのものだと思っていたが、実は連帯、トップを取るための方策としても(特に天鳳という特殊な場においては)有効な戦術なのかも知れない。
南場の親。三人競りの三着目。一枚切れの東を残して生牌の発から。「リスク最小限」をモットーに。
上家は6mチー打4m、8p9mと手出し。この手からは慎重に。
4pは4枚見え、今9pが通ったところ。14p1sがほぼ枯れているので自分の手だけ見れば4pだが、6pがほぼ通るこの瞬間に切っておきたいということだろう。
たどり着いたこのテンパイはダマ。ここで決めに行く手もあるが、基本的に大振りはしない。バットを短く持ってサクッとセンター前ヒットを打ちに行く。
このあたりも後のリスクを重めに見て+57s縦引きの好形を求めてドラ表の3m切り。これは文句なしの一打だ。
東4、ラス目で点棒がほしい局面。8mを切ってメンタンピン移行を見るかと思ったが、受け入れMAX。大振りせざるを得ない局面が来るまではバットを短く持つ。かなり愚形リーのみになりそうな手組みだが、周りが逆らいづらいラス目リーチを早く打ちたいという意識があるのだろう。
ゴミ手からドラは離さない。これはバットうんぬんではなく基本だ。
完全先制のリーのみカン2pだがダマにする。
3pを引いたところでリーチ。愚形リーチは相当打たないタイプだ。
下位3人競りの南1。親でテンパイするもリーチを受けた局面。アンパイも1枚だけなのでさすがに押していくが、三色になる両無筋5sではなく8sを押す。バットは短く、大怪我はなるべく避ける。
まだ競りの南2局。打点も速度もない手。ドラを1ターツ想定した漢5ブロック打法。ゴミ手で中途半端に前に出ることは避け、前に出られる状況になった時だけ前に出ようという意識が伺える。焦らない。
オーラスアガリラス回避の状況。南バックだがここでは7m切りのMAXに受けない。アガりたいが放縦も避けたい局面のため、後々の自由度を買う感じだろうか。
これは東2局。煮詰まりつつある局面で、安手で手を縮めたくはないが、手の内はどうせ危険牌ばかりなのでチーしてイーシャンテン。交わしに行った。
テンパイは果たしたもののアガリまでは結びつかず。
基本的にあまりリスクは冒さないが、上家が今通った9pを手出ししてきたのを見て一転攻勢。鳳南の脅し仕掛けには屈しない。
ダブルバックテンパイにリーチを受けた局面。カンも入っていて、押したくもありオリたくもある状況。下家の仕掛けが強烈にバック臭がするので字も切れず、何も切れないのでまっすぐという感じだろうか。あまりこういった「選択肢のない」状態には陥らないのだが、この時ばかりは苦しそうに流局まで押していた。
メンピンより8pチーの満貫シャンテンも大いにあるところだが、4p3枚飛びのためスルー。
ドラが一枚浮いている。アンパイを抱えてチートイツに決め打ち。
仕掛けが入り、北をキープしたまま今通った6mを切ってしっかりオリるのだが、
ここでは7sを合わせず3枚持ちの北切り。ラス目の下家にケイテンを取らせない。しっかりしている。
これがニャッピー夏目さんの真骨頂。ドラ4の勝負手だが、ラス目の親に甘い牌をおろさずリャンシャンテン戻し。
東パツ、ダマ満貫テンパイ。47pはあまりこぼれそうな牌でもないので、リーチするかと思ったがダマを選択。うっかり誰かが飛び込んでラスになるのを待つ。ラス目が出来てから上位争い開始するのがニャッピー流。
カン2sはチーしてバックに受けたが、この4mはスルー。いいバランスだと思う。
微差のトップ目。白はアンカンせずに一枚外す。安易にオリきれない局面にはしない。
そして交わし手へ。ヘッドがないこの手、4pをスルーする手もあるが、リスクの少ないこの手なら確かに単騎でもよしでチーの一手だ。
うまく交わして一局消化。一連の手順が美しい。
生牌の中を切って全員にアンパイの2pを残す。このあたりは当然の一打といったところか。
よほどの状況でもない限り、このカン6pではリーチを打たないようだ。
ツモればトイメンを飛ばして2着確定の局面だが、ここでもカンチャンを先に外す。この時点では、食いタンも大いに見ているものと思われる。
トイメンが8pを切っているのを見てダマに構える。
そしてこの8pを見逃し。58pは他家からはかなり使いづらい牌に見える。下家からだけはあがらないつもりのようだ。
最後に。ダブ東ポンが入っているこの状況。ここまでの打牌を踏まえたうえで、ニャッピーさんは何を切ってどうするだろうか。
答えは当然3面チャンでリーチ。カン7sにしたりダマにしたりはしない。いくらリスクを減らすと言ってもこの手は3面チャンで曲げないと麻雀にならない。
ここまで見てきてわかるとおり、この方は相当天鳳寄りの打ち筋だ。この打ち筋で天鳳位まで上り詰めてもらいたい。
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