月別アーカイブ: 2016年7月

天鳳強者研究③:ニャッピー夏目さん(十段) ラス回避のお手本麻雀



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第3回は現十段のニャッピー夏目さん。以前にも十段に到達されていたようなので二度目の十段だ。
この人の打ち筋は一言で言えば「リスクを最小限にして」「バットを短く持つ」打ち方である。守備の意識が高く、手をあまり短くしない。かなり好形にこだわり、愚形リーチはほとんどかけないし、愚形を嫌う手組みをする。手数自体が少なく、それでいて高打点を作っていくタイプでもない。これだけ聞くと一見ラス回避だけしつつの地蔵3着型になりそうなものなのだが、着順分布は
「258-258-259-225」
と、ラスだけを回避しているような格好になっている。なぜか。
牌譜を見ていくうちに気づいた。この方は、もともと堅いタイプな上に「ラスに厳しく」をかなり意識して打っている。その結果、目なしに近いラス目ができやすくなり、オーラスやラス前でラスの恐れのない上位争いがしやすくなるため、連帯に繋がっていくのではないか(これはただの仮説だし、本人がどういった意識で打っているのかはわからないが)。
「ラス目に厳しく」「リスクを少なく」しょっちゅう言われているこのフレーズ、ラス率を下げるためだけのものだと思っていたが、実は連帯、トップを取るための方策としても(特に天鳳という特殊な場においては)有効な戦術なのかも知れない。





1

南場の親。三人競りの三着目。一枚切れの東を残して生牌の発から。「リスク最小限」をモットーに。

2

上家は6mチー打4m、8p9mと手出し。この手からは慎重に。

3

4pは4枚見え、今9pが通ったところ。14p1sがほぼ枯れているので自分の手だけ見れば4pだが、6pがほぼ通るこの瞬間に切っておきたいということだろう。

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たどり着いたこのテンパイはダマ。ここで決めに行く手もあるが、基本的に大振りはしない。バットを短く持ってサクッとセンター前ヒットを打ちに行く。

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このあたりも後のリスクを重めに見て+57s縦引きの好形を求めてドラ表の3m切り。これは文句なしの一打だ。

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東4、ラス目で点棒がほしい局面。8mを切ってメンタンピン移行を見るかと思ったが、受け入れMAX。大振りせざるを得ない局面が来るまではバットを短く持つ。かなり愚形リーのみになりそうな手組みだが、周りが逆らいづらいラス目リーチを早く打ちたいという意識があるのだろう。

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ゴミ手からドラは離さない。これはバットうんぬんではなく基本だ。

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完全先制のリーのみカン2pだがダマにする。

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3pを引いたところでリーチ。愚形リーチは相当打たないタイプだ。

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下位3人競りの南1。親でテンパイするもリーチを受けた局面。アンパイも1枚だけなのでさすがに押していくが、三色になる両無筋5sではなく8sを押す。バットは短く、大怪我はなるべく避ける。

 

8

まだ競りの南2局。打点も速度もない手。ドラを1ターツ想定した漢5ブロック打法。ゴミ手で中途半端に前に出ることは避け、前に出られる状況になった時だけ前に出ようという意識が伺える。焦らない。

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オーラスアガリラス回避の状況。南バックだがここでは7m切りのMAXに受けない。アガりたいが放縦も避けたい局面のため、後々の自由度を買う感じだろうか。

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これは東2局。煮詰まりつつある局面で、安手で手を縮めたくはないが、手の内はどうせ危険牌ばかりなのでチーしてイーシャンテン。交わしに行った。

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テンパイは果たしたもののアガリまでは結びつかず。

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基本的にあまりリスクは冒さないが、上家が今通った9pを手出ししてきたのを見て一転攻勢。鳳南の脅し仕掛けには屈しない。

 

 

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ダブルバックテンパイにリーチを受けた局面。カンも入っていて、押したくもありオリたくもある状況。下家の仕掛けが強烈にバック臭がするので字も切れず、何も切れないのでまっすぐという感じだろうか。あまりこういった「選択肢のない」状態には陥らないのだが、この時ばかりは苦しそうに流局まで押していた。

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メンピンより8pチーの満貫シャンテンも大いにあるところだが、4p3枚飛びのためスルー。

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ドラが一枚浮いている。アンパイを抱えてチートイツに決め打ち。

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仕掛けが入り、北をキープしたまま今通った6mを切ってしっかりオリるのだが、

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ここでは7sを合わせず3枚持ちの北切り。ラス目の下家にケイテンを取らせない。しっかりしている。

 

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これがニャッピー夏目さんの真骨頂。ドラ4の勝負手だが、ラス目の親に甘い牌をおろさずリャンシャンテン戻し。

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東パツ、ダマ満貫テンパイ。47pはあまりこぼれそうな牌でもないので、リーチするかと思ったがダマを選択。うっかり誰かが飛び込んでラスになるのを待つ。ラス目が出来てから上位争い開始するのがニャッピー流。

 

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カン2sはチーしてバックに受けたが、この4mはスルー。いいバランスだと思う。

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微差のトップ目。白はアンカンせずに一枚外す。安易にオリきれない局面にはしない。

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そして交わし手へ。ヘッドがないこの手、4pをスルーする手もあるが、リスクの少ないこの手なら確かに単騎でもよしでチーの一手だ。

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うまく交わして一局消化。一連の手順が美しい。

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生牌の中を切って全員にアンパイの2pを残す。このあたりは当然の一打といったところか。

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よほどの状況でもない限り、このカン6pではリーチを打たないようだ。

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ツモればトイメンを飛ばして2着確定の局面だが、ここでもカンチャンを先に外す。この時点では、食いタンも大いに見ているものと思われる。

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トイメンが8pを切っているのを見てダマに構える。

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そしてこの8pを見逃し。58pは他家からはかなり使いづらい牌に見える。下家からだけはあがらないつもりのようだ。

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最後に。ダブ東ポンが入っているこの状況。ここまでの打牌を踏まえたうえで、ニャッピーさんは何を切ってどうするだろうか。

 

 

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答えは当然3面チャンでリーチ。カン7sにしたりダマにしたりはしない。いくらリスクを減らすと言ってもこの手は3面チャンで曲げないと麻雀にならない。

ここまで見てきてわかるとおり、この方は相当天鳳寄りの打ち筋だ。この打ち筋で天鳳位まで上り詰めてもらいたい。

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天鳳強者研究2:マジきれそう!さん(九段) 我々は目指そう、パーフェクトな1000打を



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第2回目、安定九段越え、マジきれそう!さん。

牌譜を見た印象、まじでミスがない、そつがない。切るべき牌を切り、鳴くべき牌を鳴き、蝶のように舞い、蜂のように刺す。見てもらえればわかると思うのだが、「自分はこれ切れないけど確かにこれ切りだわ」と納得させられる打牌が多い。
ちなみに以前某所のフリーで対戦した時はボコボコにやられた。すごく好青年だった。




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ドラが一枚も見えてない終盤。さっき鳴かなかった5p筋の2p切り。これがベストな選択に見える。地味な正着を積み重ねる。
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飛び寸。自分の手格好だけ見ればピンズよりはマンズの方が場況が良さそうだが、上家の両面落しを見て両無筋の4pよりは片筋の5mを選択したか。自分のアガリにばかり目が行きそうになるが、放縦するとゲームセットやリーチ棒なくなりのリスクがあるため放縦リスクも無視できない局面。まだ東4につき5m切り。なかなか打てない一打だ。
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そのあとの南1局。3枚目の7sまではスルーしていたがここらへんが限界と見てポンテンを取った。これがマジきれそう!のリアル!!
1
当然鳴くべき牌は鳴く。
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まだ東2。ドラ表だろうが切るべき牌は当然切る。ドラをつかんでいたとしても切っていただろう。
4

6sはブッパしたが、上家のドラポンにあからさまに危なそうな8mはビシッと止める。8pが鳴かれていない以上、25p47p58m69mは止める感じだろうか(369pはよくわからないが)。このあたりのバランスはさすが。

5

4m切り。アンパイはふんだんに持っているが、今にも来そうな対面の現物をキープして押し返しやすくしたい大作戦だろうか。トイメンリーチに対しては89pはまあまあ切れるし6pは吸収できる。
6

下家のポン打1m。チャンス手だが2mはいかにも刺さりそう。点棒あることだし止める牌は当然止める。そつがない。
6

トップ目+整ってる。白もあるがドラの中から。
6

親のドラポン+子のリーチ。ここでは9mを切ってシャンテンを維持するのだが、

 

6

3p引いて打6m。6mは今ならドラポンにも通るのでここで完全に爆守備。当たり前の牌を切る。私はつい9m切っちゃいそうだ。こういうところで差が出るんだろう。

6

3s引いて当然のカラ切り。当たり前の牌を切る。丁寧。
6

オーラス、親と51差、上家と132差。上家はトイトイだろうかなんだろうか。5mはトイトイの赤引き期待で残していたのかもしれない。生牌の西は切らない。
6

タンピン系の整った手牌にぽつんと浮くドラ南。北も一枚飛びだが先にドラ切り。
6

今度のドラ切りはどうだろう。愚形だらけで打点もない3シャンテン。これは白を切りそうなものだが思考を聞いてみたい。

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上家の5mに合わせる。思う存分やっちゃってくだせえ兄貴大作戦発動したか。

6

テンパイ枚数で言えばトイツを一枚落とすのが一番多いが、ピンズの横伸びも西バッタリーチも捨てられない。ここは当然のペンチャン落とし。本当にこの人は当然の一打しか打たない。当然の一打を当然のように打てる強さ。

6

自分の手に溺れずにダントツリーチにはきっちりオリ。

6

現状トイメンと172差、下家と234差(上家はテンパっているのかよくわからない)。開くと次局トイメンは倍ツモ条件、自分はハネツモ条件なうえ、トイメンは点棒状況的に倍満なんぞ作っている暇なし。+45PT⇒+-0になるリスクより、+45pt⇒+90ptのリターンを見たほうが明確に有利。次局はスピード勝負+下家から34位への差込+満貫出上がり不可のため、ハネツモがきついことには変わりないのだが・・・。

6

ウワサの次局。一見謎の一打に見えるがじっくり考えていこう。

8m切りで一通含みだが9sが3m飛びでさすがに厳しい。となると5sを切った完全シャンテンに受けそうなものだが、69mの場況はかなりよく見えて、69sはきつい。ここは完全形に受けず、78s引きの方の完全シャンテンを見て7m切りということだろう。この一打はよっぽど鍛錬を積んでないと打てないし、そもそも思い浮かばない。凡人の私は5sを切って上がれない。名人に名手なしというがこれはなかなかの名手なんじゃないだろうか。

6

マンズかピンズから一枚切りたくなるところだが4s切り。ソーズが死ぬのめっちゃイヤだけど確かにこの手ではポンテン逃す方が痛いかも。

6

多少リードのある南1局、カンパチ。待ちとしては悪くないがダマで局進行重視。

6

チーして打9m。9pは3飛び。この手を上がれれば大分トップが近づきそう。からの

6

親はカン4sよりはカン6sに受けそうなものだし、染めてる下家にも今なら大方通りそうなものだが、この点差でリスクは負わないということなんだろう。堅い。

どうだろう。僕はガチ強の人の牌譜を見ると、自分では打てないけど確かにそれが正着だわと納得させられることがよくあるのだが、この人の麻雀はまさにそんな感じだった。攻撃と守備のバランス、手組みのバランスが抜群。正直この人には向こう10年勝てそうにないと思わされる、素晴らしい牌譜だった。

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